味噌やしょうゆ、納豆、漬物まで、日本人は「発酵」を味わいと健康の両面で上手に活用してきました。そもそも「発酵」とは、微生物(細菌、酵母、カビなど)が持っている働きを応用して、食材から人間にとって有用な物質を生み出すこと。麹菌や乳酸菌、納豆菌などの菌がこの微生物の一種です。これらが主にたんぱく質をアミノ酸に、でんぷんをブドウ糖に分解することで、消化吸収を高めたり、旨みや風味をアップさせたりします。
「腐敗」との違いは非常にシンプルで、人にとって有益か有害かの一点にあります。有益であれば発酵、有害であれば腐敗となり、微生物が作用するメカニズムは同じ。そのため、見分け方がわからないという声もよく聞きますが、簡単です。自分の嗅覚を信じるのが一番! 人に備わる”有害物を感知する能力“は非常に優れており、中でも嗅覚は危険物を感知するセンサーになります。もちろん中には、納豆や青カビチーズなど、独特の風味の発酵食品が苦手な方もいるでしょう。ただこれらは、土地環境や生活習慣によって育まれてきた多様な嗜好の一つであり、まさにその地域を表す文化。発酵の奥深さの象徴ともいえます。
一方で「熟成」とはメカニズム自体が異なります。熟成は、食材自身が持っている酵素などによって栄養素に変化をもたらすこと。つまり微生物は介在していません。
「酵素」はたんぱく質の一種で、人間や動物、 植物などすべての生物に存在し、化学反応を手助けします。微生物もさまざまな酵素を持っており、酵素の作用によって発酵を行っているというわけです。