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会津より綴る 鰊と山椒と、母の味

会津より綴る 鰊と山椒と、母の味
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(にしん)と山椒と、母の味

 この頃、救急車の音をよく耳にする。私の家は交差点角にあるので、とても気になる。熱中症の時期、知らぬ間に命の危険に晒されているということは少なくない。

 私にも経験がある。あれは、講演に出ていた頃だった。今と違い、車椅子用トイレの有無が悩みの種だった私は、講演に出る時は前日から水分を断つようにしていた。

 其の日も暑く、しかし講演は無事に終わった。ところが宿舎についた瞬間、突然、吐いて倒れたのだ。 

 気づいたのは病院で、バケツのような点滴が両腿に刺され、酸素吸入が施されていた。先生は言われた。
「人の体の3分の2は水分でできている。もしその1割が不足したら、人は死んでしまうんだよ」

 以来、私は「水こそ命」とばかりに、日中は無論、起床時と就寝時に必ず、200㏄の水をかみしめるように飲んだ。
 しかし、水は飲んでも食欲は全くなかった。食べなければ死ぬというのに、思い出されたのは、祖母や母の手になる食卓だった。

 まだ流通の悪かった時代、会津の人々にとって新鮮な魚介類を入手することは難しく、地の物で高度な栄養保存対策に心を尽くし、春夏秋冬の健康を保っていた。
 だがそれが今や、「会津の郷土料理」と称され、観光源だというから興味深い。

 丁度、今時分は、日本最古の薬味といわれる山椒の葉が茂り、山椒を用いた料理の仕込み時。私の好物「鰊の山椒漬け」は、山椒の痺れや辛みが食欲をそそる。考えていたら、何だか食べたくなってきた。
 他にも、「こづゆ」「鯉の甘煮」「棒鱈煮」「馬刺」「いか人参」「饅頭の天ぷら」等々。

 あっ! また救急車が行く。

大石邦子(おおいし・くにこ)
著述家、エッセイスト。
会津女子高等学校卒業後、出光興産会津事務所に入社。1964年に交通事故に遭い、半身不随となる。長期間の闘病・車いす生活を送る一方、著述家として活躍。
著書に『この生命ある限り』他多数。

商品特徴

会津より綴る 鰊と山椒と、母の味

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(にしん)と山椒と、母の味

 この頃、救急車の音をよく耳にする。私の家は交差点角にあるので、とても気になる。熱中症の時期、知らぬ間に命の危険に晒されているということは少なくない。

 私にも経験がある。あれは、講演に出ていた頃だった。今と違い、車椅子用トイレの有無が悩みの種だった私は、講演に出る時は前日から水分を断つようにしていた。

 其の日も暑く、しかし講演は無事に終わった。ところが宿舎についた瞬間、突然、吐いて倒れたのだ。 

 気づいたのは病院で、バケツのような点滴が両腿に刺され、酸素吸入が施されていた。先生は言われた。
「人の体の3分の2は水分でできている。もしその1割が不足したら、人は死んでしまうんだよ」

 以来、私は「水こそ命」とばかりに、日中は無論、起床時と就寝時に必ず、200㏄の水をかみしめるように飲んだ。
 しかし、水は飲んでも食欲は全くなかった。食べなければ死ぬというのに、思い出されたのは、祖母や母の手になる食卓だった。

 まだ流通の悪かった時代、会津の人々にとって新鮮な魚介類を入手することは難しく、地の物で高度な栄養保存対策に心を尽くし、春夏秋冬の健康を保っていた。
 だがそれが今や、「会津の郷土料理」と称され、観光源だというから興味深い。

 丁度、今時分は、日本最古の薬味といわれる山椒の葉が茂り、山椒を用いた料理の仕込み時。私の好物「鰊の山椒漬け」は、山椒の痺れや辛みが食欲をそそる。考えていたら、何だか食べたくなってきた。
 他にも、「こづゆ」「鯉の甘煮」「棒鱈煮」「馬刺」「いか人参」「饅頭の天ぷら」等々。

 あっ! また救急車が行く。

大石邦子(おおいし・くにこ)
著述家、エッセイスト。
会津女子高等学校卒業後、出光興産会津事務所に入社。1964年に交通事故に遭い、半身不随となる。長期間の闘病・車いす生活を送る一方、著述家として活躍。
著書に『この生命ある限り』他多数。

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2024年7月1日

会津より綴る 鰊と山椒と、母の味

(にしん)と山椒と、母の味

 この頃、救急車の音をよく耳にする。私の家は交差点角にあるので、とても気になる。熱中症の時期、知らぬ間に命の危険に晒されているということは少なくない。

 私にも経験がある。あれは、講演に出ていた頃だった。今と違い、車椅子用トイレの有無が悩みの種だった私は、講演に出る時は前日から水分を断つようにしていた。

 其の日も暑く、しかし講演は無事に終わった。ところが宿舎についた瞬間、突然、吐いて倒れたのだ。 

 気づいたのは病院で、バケツのような点滴が両腿に刺され、酸素吸入が施されていた。先生は言われた。
「人の体の3分の2は水分でできている。もしその1割が不足したら、人は死んでしまうんだよ」

 以来、私は「水こそ命」とばかりに、日中は無論、起床時と就寝時に必ず、200㏄の水をかみしめるように飲んだ。
 しかし、水は飲んでも食欲は全くなかった。食べなければ死ぬというのに、思い出されたのは、祖母や母の手になる食卓だった。

 まだ流通の悪かった時代、会津の人々にとって新鮮な魚介類を入手することは難しく、地の物で高度な栄養保存対策に心を尽くし、春夏秋冬の健康を保っていた。
 だがそれが今や、「会津の郷土料理」と称され、観光源だというから興味深い。

 丁度、今時分は、日本最古の薬味といわれる山椒の葉が茂り、山椒を用いた料理の仕込み時。私の好物「鰊の山椒漬け」は、山椒の痺れや辛みが食欲をそそる。考えていたら、何だか食べたくなってきた。
 他にも、「こづゆ」「鯉の甘煮」「棒鱈煮」「馬刺」「いか人参」「饅頭の天ぷら」等々。

 あっ! また救急車が行く。

大石邦子(おおいし・くにこ)
著述家、エッセイスト。
会津女子高等学校卒業後、出光興産会津事務所に入社。1964年に交通事故に遭い、半身不随となる。長期間の闘病・車いす生活を送る一方、著述家として活躍。
著書に『この生命ある限り』他多数。