からだを動かすエネルギーの源とは?
私たちは食べたものから必要な栄養素を摂り入れ、それを生命維持や活動するためのエネルギーに変えています。何もしていなくても、私たちは食べたものから必要な栄養素を摂り入れ、それを生命維持や活動するためのエネルギーに変えています。何もしていなくても、50~60代男性では約1400?、女性では約1100?(注1)を消費し、加えて仕事をしたりスポーツや趣味を楽しんだりするにはそれ以上のエネルギーが必要になります。栄養素の中でも「糖質(炭水化物)」「たんぱく質」「脂質」の3大栄養素がエネルギー源で、「ビタミン」「ミネラル」などが、それらをエネルギーに変えるために働きます。
糖質は1gで4?を生産し、主に脳や筋肉に利用される、速効性の高いエネルギー源です。使われずに余った分は体脂肪として蓄積されるので、食べ過ぎには注意が必要です。
たんぱく質は、骨や筋肉、皮膚などを作るためには欠かせませんが、一方で糖質が生産するエネルギーが不足すると、それを補充するためにエネルギーに変換されてしまいます。そのため、糖質不足が続くと、筋肉量や免疫力の低下を招きます。
脂質は、1gで9?と3大栄養素の中で最も高いエネルギーを生産しますが、摂り過ぎると肥満や生活習慣病の原因になります。ただし、そうした脂質の中でも、細胞膜の材料である「必須脂肪酸」
(注2)が不足すると、脳や血液、皮膚などにトラブルが起きやすくなります。一口にエネルギー源と言ってもからだの中でのエネルギーの使われ方は異なり、からだを作る材料にもなっているので、単純にカロリーの数値だけでは語れない側面があります。
(注1)厚生労働省「日本人の食事摂取基準」(2015年版)より。
(注2)からだを作る60兆個の細胞膜の材料となる。生きていく上で欠かせない脂肪酸の総称。
3大栄養素とビタミン・ミネラルの働きによってエネルギーが作られます
脂質
たんぱく質
糖質(炭水化物)
3大栄養素
ビタミン
ミネラル
エネルギーが生産される
燃費を高める「必須脂肪酸」
私たちが普段調理に使う植物油は大さじ1杯(15g)で135?あり、それを燃焼させるには、ビタミンとミネラルが十分に足りた状態であっても、早足で約30分のウォーキングをしなければなりません。これではなるべく油を摂りたくないという気持ちになりますよね。ここで「必須脂肪酸」の出番です。必須脂肪酸を摂ることによって、栄養素の吸収や不要なものを排出するなどの細胞の働きがスムーズになり、カロリーの燃焼が促進されます。また必須脂肪酸は、全身に酸素や栄養素を運ぶ血液中の赤血球を増やしたり、形状をやわらかくしたりするので、よりスムーズにすみずみまでエネルギーを行き渡らせることができます。まさに血液サラサラという状態です。これによってスタミナが増加し、からだに脂肪が蓄積されにくくなります。必須脂肪酸が不足したり、トランス脂肪酸や酸化した質の悪い油を摂ったりしていると、細胞膜は硬くなり正常に働きません。細胞膜の質が健康のバロメーターになります。必須脂肪酸を適量摂ることを意識し、燃費を高め、エネルギーを効率よく使いましょう。
油脂の成分「脂肪酸」の種類と特徴
必須脂肪酸 | オメガ3
| 体内で作ること ができないので、 食品から摂取する 必要がある。
| 亜麻仁油、しそ油、 魚の油 など | 生で食べる。 加熱に向いて いない。 |
オメガ6 | ひまわり油、紅花油、 ごま油 など |
その他の脂肪酸 | オメガ9 | 体内で作る ことができる。
| オリーブ油、菜種油 など | 加熱も可能だが、 生の方が良い。 |
飽和脂肪酸 | バター、ココナッツ油 など | 加熱に向いている。 |
必須脂肪酸 | その他の脂肪酸 |
オメガ3 | オメガ6 | オメガ9 | 飽和脂肪酸 |
体内で作ること ができないので、 食品から摂取する 必要がある。 | 生で食べる。 加熱に向いて いない。 |
亜麻仁油、しそ油、魚の油 など | ひまわり油、紅花油、ごま油 など | オリーブ油、菜種油など | バター、ココナッツ油など |
体内で作ること ができないので、 食品から摂取する 必要がある。 | 加熱も可能だが、 生の方が良い。 | 加熱に向いている。 |
油は調理用だけでなく、栄養素を意識して
日本では、植物油は一般的に食材を炒める、揚げるなどの調理に用いられ、その利便性を求めた商品が多いのですが、残念ながら必須脂肪酸は加熱に弱く酸化しやすいため、加熱調理では必要量を摂ることはできません。また、加齢とともに少食になると摂取量が減り、洋食メニューや加工食品には目に見えない他の油脂も多く含まれているため、必須脂肪酸は摂りにくくなります。必須脂肪酸の摂取量を確保しながらその効果を十分に生かすには、未精製のフレッシュな植物油を加熱せずに摂る必要があります。ビタミン・ミネラルが豊富な野菜類などを一緒に食べてエネルギーを効率的に作るのも、一つの方法です。これからは油を賢く選び、調理用だけでなく栄養素を摂ることも意識していきませんか?