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病気の根っこには鉄不足の影響が

体内で、鉄の約70％は血液中の赤血球の「ヘモグロビン」を作る材料として使われます。ヘモグロビンは全身の組織に酸素を運ぶという、生命活動において絶対に欠かせない役割を担っています。このことから、私たちにとって鉄はなくてはならないものだということが分かります。残りの約30%は肝臓や脾臓などに貯蔵されています。
鉄が不足すると、ヘモグロビンの質が悪くなったり、数が減ったりして、働きが悪くなり、全身に酸素を十分に運ぶことができず、からだが酸欠状態になります。そこで、疲れやすい、集中力が低下する、冷えなどの症状が現れます。その状態を軽く見て放置すると、つまり酸欠状態をそのままにすると、エネルギーが作られなくなり、からだ全体の細胞の機能が低下していきます。すぐに重篤な病気になるわけではありませんが、少しずつ細胞の状態が悪くなり、全身に悪影響を及ぼし始めます。例えば、脳に酸素が十分にいかなくなることによって認知機能の低下を引き起こしたり、細胞に有害な重金属が溜まりやすくなったり、腸の細胞がうまく働かなくなるので腸内環境が悪くなったりと、鉄不足は、皆さんが思っている以上に多くの健康トラブルとつながっています。

鉄が貯蔵されているかどうかが重要

皆さんは血液検査の「ヘモグロビン濃度」を確認したことがありますか？ 貧血診断の目安とされる項目です。私はこれに追加して鉄の貯蔵量「フェリチン濃度」の検査もおすすめします。
ヘモグロビン濃度が正常値であっても、本当に鉄が足りているのか、ヘモグロビンがいい状態なのかまでは分かりません。なぜなら、ヘモグロビンは絶対に足りなくなってはいけないものなので、数値はなかなか下がりません。貯蔵鉄から補充し、見かけ上は活動している状況を作っているだけで、いわゆる隠れ貧血の可能性もあります。フェリチン濃度が正常値であれば、貯蔵鉄が十分にあり、ヘモグロビンが健康的に働いていると言えるでしょう。
貧血の症状で冷たいものを口に入れたくなる場合があります。これは、鉄不足によってからだにストレスがかかり、興奮ホルモンが分泌されることによってからだの中が熱くなって、鎮静化のために冷たいものが欲しくなるためです。このような症状が出たら、フェリチンが空っぽの可能性が高いと言えます。

高齢になったら食事だけでは鉄が足りない

高齢者が鉄不足になるのには、主に３つの理由があります。１つ目は、鉄からヘモグロビンを作る能力が低下すること。2つ目は、少食になるにつれて、鉄の摂取量も減ってきます。加えて、近年の野菜に含まれている鉄は激減しており、普通の食事で必要量を摂ることは難しくなっています。3つ目は、鉄だけではありませんが、栄養素の消化吸収能力が低下します。さらに、高齢になると便秘になりやすいので、吸収率はもっと下がります。
また、運動をすると、汗と一緒に鉄が排出されますし、ジョギングなどで足の裏に衝撃を与えると血液中の赤血球が壊れて鉄が失われます。定期的に運動をしている方は、鉄不足によってからだにかなりの負担がかかっていると考えられます。

サプリメントで鉄を補充するには

① 質の良いサプリメントを選ぶ
一般的なサプリメントや鉄剤は製造上の問題で、酸化してサビている可能性があります。便が黒くなったり、胃腸の具合が悪くなったりするのはそのためです。酸化していない質の良いものをお選びください。

② 適切な量を摂る
男女ともに1日12㎎を目安に。鉄は吸収が悪く、1日に吸収できる量は決まっています。今日だけ摂ればいいということではなく、継続して摂りましょう。
＊一般的に、成人男性約10㎎、成人女性約12㎎…女性が男性より２㎎多いのは生理による鉄の損失を考慮
＊思春期女子10～14㎎、妊娠前期は2.5㎎付加、妊娠中・後期は15㎎付加

③ 便秘を改善し、腸内環境を整える
慢性的な便秘は栄養素の吸収力を低下させ、腸内も酸化しやすくなります。
①～③を少なくとも、３ヵ月は続けましょう。必要なところから鉄が使われ始め、何らかの体感が現れてきます。貯蔵鉄であるフェリチン濃度は半年から1年以上もかかって数値が上がるという方もいて、結果が現れるまでに時間がかかる場合もあります。
継続的な鉄の補給は、健康の土台を作ります。検査などの客観的なデータも用いながら健康維持にお役立てください。