私たちにとって最も重要な臓器「脳」。「健やか脳の作り方 トレーニング編その⑤」(「よい日々」2023年11月号)では、脳にも温度=「脳温」があり、脳温を意識した生活が脳の健康によいとお伝えしました。脳は内臓と違って周りを脂肪で囲まれていないため、外気との距離が近く、実は温度変化…中でも暑さに弱いという性質があります。となれば、近年続く、未曾有の猛暑の影響が気になるところです。
まずは脳温について、簡単におさらいしましょう。そもそも、私たちには2種類の体温があります。一つは、体温計で測れる「表面温度」。文字通り皮膚表面の温度のことで、気温や衣類、体調などの外部環境に左右されやすいため常に大きく変化しています。対して、内臓や血液といったからだの内部の温度が「深部温度」です。体内のさまざまな機能を守るためにほぼ一定に保たれており、脳温も深部温度の一つ。
この深部温度には、生体リズムのように24時間周期のリズムがあることがわかっています。高低差は0・7~1・3度とわずかながら、起床2時間前が最も低く、そこから徐々に上昇し、起床11時間後に最高に達した後、下がっていくというものです。夜に温度を下げることで神経や内臓の活動を鎮静させ、ダメージの修復や疲労を取り除いていると考えられています。
ただし、深部温度リズムも加齢と共に変化します。温度差が狭まる、リズムが後ろにずれるなどです。さらに、加齢に伴う女性ホルモンや筋肉量の低下・減少による影響も。一方で見方を変えると、適度な運動や規則正しい生活で筋肉量を維持したり、ホルモンバランスを整えたりすることができれば、深部温度リズムを保つことに繋がるともいえるでしょう。つまり、深部温度リズムを正常化させ、脳を始めとするからだの中の各器官の機能が適切に働くことで、全身の健康にも役立つというわけです。