「アブラ」と聞いただけで、肥満やメタボと結び付けてしまう方がいらっしゃいますが、脂質は私たちの生命を維持するために不可欠な栄養素。ただし脂質にはさまざまな種類があり、それを理解した上で上手に摂ることが大切です。
まず、脂質は大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。飽和脂肪酸は主に、肉の脂やバターなどの動物性脂肪に多く含まれ、常温では固まっている脂質のこと。一方、不飽和脂肪酸は植物や魚に由来する油で、常温でも液体です。不飽和脂肪酸はさらに、体内で作ることができる「一価不飽和脂肪酸」と、体内で作ることができないため食事で摂る必要がある「多価不飽和脂肪酸(必須脂肪酸)」に分けられます。それぞれ後ほど詳しく説明しますが、まずこれらすべての脂質は、大まかに次の6つの役割を持っています。
①効率のよいエネルギー源になる
②細胞膜の構成成分になる
③脂溶性ビタミン(ビタミンA・D・E・K)の吸収を促進する
④肝臓で胆汁酸に変換され消化液の材料になる(消化吸収を助ける)
⑤からだを調整する機能を持つ、性ホルモンや副腎皮質ホルモンの材料となる
⑥体温を維持し、内臓を保護する
中でも②〜⑥は脂質だけが持つ機能なので、年を重ねても、やはり必ず摂る必要があります。
例えば脂質が不足すると、粘膜や皮膚を健康に保つビタミンA・Eなどの脂溶性ビタミンの吸収率が悪くなり、粘膜による保護力やビタミン不足による体内機能の低下から、免疫力の低下を招きます。また、約50種類ほどある、脂質を材料とするホルモンには、抗炎症作用や糖代謝・血圧を正常に保つ作用が。脂質が足りなくなれば、これらのホルモン生成にも支障をきたします。つまり、脂質不足はからだのさまざまな機能に影響を及ぼすのです。