心やからだに不調が現れると、よく「自律神経を整えるとよい」といわれます。では、”整う“とはどのようなことをいうのでしょう? まずは「自律神経が乱れた状態」を考えてみましょう。
そもそも自律神経とは、からだのさまざまな機能を調整する神経のことで、その名の通り独立して自主的に働く”自律“した存在です。私たちが自分の意思と関係なく、緊張するとドキドキし、リラックスすると自然と心拍がゆっくりになるのは、まさに自律神経の働きによるもの。
自律神経は、アクセル的な役割をする「交感神経」とブレーキ的な役割をする「副交感神経」に分かれていて、時間や場面によってシーソーのようにバランスを取りながら働いています。一日の大きな流れでいえば、朝起きてから日中にかけてはからだを活動モードにするために交感神経が優位になり、夕方以降の休息に入る時間になると副交感神経が優位となるといった具合。これが理想的な自律神経のリズムです。
しかし、夜ふかしが続いたり、日中にダラダラ過ごしたりといった不規則な生活を送っているとこのリズムが乱れてしまい、自律神経は正常な調整ができなくなります。結果、心拍や睡眠、感情など、自律神経が支配するさまざまな機能に不調をきたしてしまうのです。これは「よい日々」4月号「新・規則正しい生活」で紹介した体内時計と同じ仕組みです。体内時計と自律神経は互いに深く関わり合う表裏一体の関係にあります。体内時計が乱れると自律神経も乱れ、その逆も然り。つまり自律神経を整えることは、体内時計を整えることにも繋がるのです。
自律神経の乱れ方には大きく二つのタイプがあります。一つは「交感神経が過剰に働いている状態」です。情報社会の中で、ストレスや不安、スマートフォンの使い過ぎなどが原因で緊張状態が続き、常に交感神経が優位になっている状態をいいます。現れる症状としては、動悸や頭痛、イライラなど。ドキドキや不安に陥った時はとにかくゆったりと深呼吸をしましょう。「呼吸」は、私たちが意図的に自律神経をコントロールできる唯一の方法といえます。
もう一つは「交感神経の働きが停滞している状態」で、ダラダラとメリハリのない生活を送ることで起こります。実はこちらのほうが問題だと私は感じています。特にコロナ禍では、昼間も自宅でじっとしている方が多かったことでしょう。本来なら日中にしっかり活動して交感神経を大きく優位にする必要があるのですが、それが難しかったことで交感神経が上手く働かないというケースが見られるようになりました。すると、副交感神経が優位になるはずの夕方以降でも昼間との落差が少ないためにからだが十分に休まりません。やはり規則正しい、メリハリのある生活を送ることは非常に重要です。
こうした交感神経と副交感神経のバランスの乱れが原因で生じる不調が、よく耳にする「自律神経失調症」です。自律神経は驚くほど多くのからだの機能に関わっているため、症状も多様。倦怠感、不眠、めまい、頭痛、動悸、肩こり、胃痛、腹痛、下痢、便秘、冷え、イライラ、うつ…。涙が出る、笑えないなどといった心の不調が現れることも。個人差が大きいことも特徴といえるため、不調を軽くするためには自分の自律神経の乱れの原因をいち早く見付けることが大切です。