2022年4月号の「よい日々」では、入浴の3大効果「血流改善」「リラックス効果」「要介護リスク低下」を解説しました。お伝えしたとおり、非常に健康によい入浴ですが、実は寒い季節は注意しなければいけないことがあります。それが「ヒートショック」です。ヒートショックとは「急激な温度の変化で、からだがダメージを受けること」(日本医師会)をいい、突然死をもたらす大変危険な現象です。東京都健康長寿医療センター研究所によると、入浴中の死者数は全国で年間約1万7千人(2011年調べ)、その原因の多くはヒートショックに関連しているそう。なんと交通事故による死者よりも多い数です。
では、なぜヒートショックが起こるのでしょうか。関わっているのが自律神経と血圧です。
自律神経は、私たち人間が生きるために必要なさまざまな活動を司っていて、環境の変化に合わせてからだを調節する役割を果たしています。例えば、暖かい場所から急に寒い場所に行くと、自律神経の一つである交感神経が優位になり、血管収縮・急激な血圧上昇が起こります。反対に、寒い場所から暖かい場所に移動すると、副交感神経が優位になり、血管が拡がって血圧が一気に下がる、という具合です。
血圧の急上昇は心筋梗塞や脳出血などを、急降下は立ちくらみや失神、脳梗塞などを引き起こします。こうした大きな気温変化に短時間でさらされるのが、「冬の入浴」。寒い脱衣場と暖かい浴室を思い浮かべてもらえればお分かりいただけるでしょう。さらに、湯に浸かっている時に気を失うことを想像してみてください。溺れて死に至りかねないというわけです。
ヒートショックは”ショック〝の名の通り、一瞬の出来事です。実際にヒートショックで救急搬送されてくる方の大半が「裸でびしょびしょ」の状態。起こってからでは遅いからこそ、日頃の意識が重要です。また、寒いトイレで用を足したり、朝起きがけに薄着のまま外の新聞を取りに行ったりした時なども起こります。とにかく冬は、急激な温度変化に要注意! です。