日本人ほどお風呂好きの国民はいないといわれています。水が豊富な火山大国で、古くから温泉に浸かる文化があることが大きな要因でしょう。湯に浸かる入浴にはさまざまな健康効果が期待できますが、中でも特に、シニアの方々に知っていただきたい3点についてお話しします。
① 血の巡りをよくする
② リラックス効果をもたらす
③ 要介護のリスクを下げる
です。
まず私が入浴の最大のメリットと考えているのが、血液の循環を改善する効果です。
出典:Journal of Dermatological Science61(2011)206-207
私たちのからだの至るところに張り巡らされている毛細血管は、加齢と共に減少していきます。その結果、血液が運ぶ酸素や栄養がからだのすみずみまで届かなくなったり、老廃物を回収する働きが低下したりします。こうした血の巡りの悪さは代謝の低下を招き、冷えや健康を損なう一因になっています。
入浴によって血液循環が促されれば、酸素や栄養が全身に行き渡り、かつ老廃物の回収も滞りなく行われます。日本人が長寿なのはまさに、入浴による血液循環の改善効果が関係していると私は考えています。
2つ目はリラックス効果です。湯に浸かるとからだの力が抜け、ゆったりとした気分になります。これは自律神経の一つ、副交感神経が優位になるからです。
私たちのからだは、交感神経と副交感神経という2種類の自律神経によってコントロールされています。日中は活動モードである交感神経が優位になり、日暮れと共にリラックスモードである副交感神経が優位になります。この自律神経の切り替えに役立つのが入浴です。多くの方が習慣にしている、「仕事や用事などで出先から帰宅したらお風呂に入る」という行動パターンは、自律神経を整えるという点から、とても理にかなっているといえます。
さらにシニアにとって心強い効果もわかってきました。それが3つ目の、入浴習慣がある人ほど要介護リスクが下がるということです。
千葉大学などが全国18市町村に住む高齢者約1万4千人を対象に3年間、追跡調査した結果から明らかになったもので、湯に浸かる入浴の回数が週に0~2回の人と比べて、毎日入る人は要介護リスクがおよそ3割減っていました。他にも入浴をすると心拍数が上がることから、軽い運動と同等のトレーニング効果があるという検証結果も報告されています。運動習慣のない方にとって、入浴は手軽に取り組めるトレーニングの一つといえるでしょう。
出典:『お風呂の習慣(浴槽入浴)で要介護認定が3割減~高齢者1万4千人 3年間の追跡調査より~』(千葉大学) 2018年11月より改変