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会津より綴る 「あたらしき春は来にけり」

会津より綴る 「あたらしき春は来にけり」
  • 会津より綴る 「あたらしき春は来にけり」
大石邦子(おおいし・くにこ)

著述家、エッセイスト。会津女子高等学校卒業後、出光興産会津事務所に入社。1964年に交通事故に遭い、半身不随となる。長期間の闘病・車いす生活を送る一方、著述家として活躍。
著書に『この生命ある限り』他多数。
大石邦子(おおいし・くにこ)



著述家、エッセイスト。会津女子高等学校卒業後、出光興産会津事務所に入社。1964年に交通事故に遭い、半身不随となる。長期間の闘病・車いす生活を送る一方、著述家として活躍。
著書に『この生命ある限り』他多数。
あたらしき春は来にけり

定刻の夜の電話の姉と吾
安否語らひ 一日の終はる

 新しい年、皆様いかがお過ごしでしょうか。まだまだ憂いに満ちた日々の連続のような気も致しますが、今年はきっと、よいこともあると自分に言い聞かせて過ごしております。

 今年丑年の年賀状全国版には、この頁に描かれている「赤べこ」が採用されていて驚きました。べこ、は会津地方の牛の方言です。

 首がゆらゆら揺れる愛らしい張り子の玩具で、400年に渡って魔除け、疫病除けの縁起物として親しまれてきました。

 先人たちも、コロナのように得体のしれない疫病に苦しめられ、それに耐え、乗り越えてきた歴史だったと思われます。そんな時、心を寄せたお守りだったのでしょう。

 私の昨年は、講演も辞め、病院以外殆ど外へは出ない一年でした。時間ができたら読もうと思っていた本も沢山あったのですが、結局は高く積み上ったまま、今日に至っています。

 唯、心がけたことは、このコロナに明け暮れる日々を歌にしておこうと思ったことです。というのも、私にとって物を書くきっかけは短歌だったのです。病院の先生に薦められたのですが、長くは続かず30年ほどの空白があります。

 でも、何かあると、形にはならなくとも胸の奥から言葉のようなものがこみ上げてきて、それを紡ぎ始める時、心の奥のもやもやが癒されてゆくような気がするのです。癌が見つかった時も、そうでした。

愛を持てふれられしこともなき乳房
抱きて沈む病棟の湯に
明日には切除されなむわが乳房
泡に包みてしばし泣きたり

 今は、「コロナノート」に、日記の如く、歌ともいえない歌を綴っています。書くことは、自分の心の整理手段のようです。

孤独とも死とも抱き合ひ生き抜かむ
空も大地もわが友なれば

商品特徴

会津より綴る 「あたらしき春は来にけり」

会津より綴る 「あたらしき春は来にけり」
大石邦子(おおいし・くにこ)

著述家、エッセイスト。会津女子高等学校卒業後、出光興産会津事務所に入社。1964年に交通事故に遭い、半身不随となる。長期間の闘病・車いす生活を送る一方、著述家として活躍。
著書に『この生命ある限り』他多数。
大石邦子(おおいし・くにこ)



著述家、エッセイスト。会津女子高等学校卒業後、出光興産会津事務所に入社。1964年に交通事故に遭い、半身不随となる。長期間の闘病・車いす生活を送る一方、著述家として活躍。
著書に『この生命ある限り』他多数。
あたらしき春は来にけり

定刻の夜の電話の姉と吾
安否語らひ 一日の終はる

 新しい年、皆様いかがお過ごしでしょうか。まだまだ憂いに満ちた日々の連続のような気も致しますが、今年はきっと、よいこともあると自分に言い聞かせて過ごしております。

 今年丑年の年賀状全国版には、この頁に描かれている「赤べこ」が採用されていて驚きました。べこ、は会津地方の牛の方言です。

 首がゆらゆら揺れる愛らしい張り子の玩具で、400年に渡って魔除け、疫病除けの縁起物として親しまれてきました。

 先人たちも、コロナのように得体のしれない疫病に苦しめられ、それに耐え、乗り越えてきた歴史だったと思われます。そんな時、心を寄せたお守りだったのでしょう。

 私の昨年は、講演も辞め、病院以外殆ど外へは出ない一年でした。時間ができたら読もうと思っていた本も沢山あったのですが、結局は高く積み上ったまま、今日に至っています。

 唯、心がけたことは、このコロナに明け暮れる日々を歌にしておこうと思ったことです。というのも、私にとって物を書くきっかけは短歌だったのです。病院の先生に薦められたのですが、長くは続かず30年ほどの空白があります。

 でも、何かあると、形にはならなくとも胸の奥から言葉のようなものがこみ上げてきて、それを紡ぎ始める時、心の奥のもやもやが癒されてゆくような気がするのです。癌が見つかった時も、そうでした。

愛を持てふれられしこともなき乳房
抱きて沈む病棟の湯に
明日には切除されなむわが乳房
泡に包みてしばし泣きたり

 今は、「コロナノート」に、日記の如く、歌ともいえない歌を綴っています。書くことは、自分の心の整理手段のようです。

孤独とも死とも抱き合ひ生き抜かむ
空も大地もわが友なれば

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2021年2月8日

会津より綴る 「あたらしき春は来にけり」

あたらしき春は来にけり

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 新しい年、皆様いかがお過ごしでしょうか。まだまだ憂いに満ちた日々の連続のような気も致しますが、今年はきっと、よいこともあると自分に言い聞かせて過ごしております。

 今年丑年の年賀状全国版には、この頁に描かれている「赤べこ」が採用されていて驚きました。べこ、は会津地方の牛の方言です。

 首がゆらゆら揺れる愛らしい張り子の玩具で、400年に渡って魔除け、疫病除けの縁起物として親しまれてきました。

 先人たちも、コロナのように得体のしれない疫病に苦しめられ、それに耐え、乗り越えてきた歴史だったと思われます。そんな時、心を寄せたお守りだったのでしょう。

 私の昨年は、講演も辞め、病院以外殆ど外へは出ない一年でした。時間ができたら読もうと思っていた本も沢山あったのですが、結局は高く積み上ったまま、今日に至っています。

 唯、心がけたことは、このコロナに明け暮れる日々を歌にしておこうと思ったことです。というのも、私にとって物を書くきっかけは短歌だったのです。病院の先生に薦められたのですが、長くは続かず30年ほどの空白があります。

 でも、何かあると、形にはならなくとも胸の奥から言葉のようなものがこみ上げてきて、それを紡ぎ始める時、心の奥のもやもやが癒されてゆくような気がするのです。癌が見つかった時も、そうでした。

愛を持てふれられしこともなき乳房
抱きて沈む病棟の湯に
明日には切除されなむわが乳房
泡に包みてしばし泣きたり

 今は、「コロナノート」に、日記の如く、歌ともいえない歌を綴っています。書くことは、自分の心の整理手段のようです。

孤独とも死とも抱き合ひ生き抜かむ
空も大地もわが友なれば
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大石邦子(おおいし・くにこ)

著述家、エッセイスト。会津女子高等学校卒業後、出光興産会津事務所に入社。1964年に交通事故に遭い、半身不随となる。長期間の闘病・車いす生活を送る一方、著述家として活躍。
著書に『この生命ある限り』他多数。
大石邦子(おおいし・くにこ)



著述家、エッセイスト。会津女子高等学校卒業後、出光興産会津事務所に入社。1964年に交通事故に遭い、半身不随となる。長期間の闘病・車いす生活を送る一方、著述家として活躍。
著書に『この生命ある限り』他多数。