私たちの健康と栄養の関係について考える時、健康でいるためにすべての人に共通して絶対に必要なものが「必須栄養」です。
必須栄養の数は、研究で発見される度に少しずつ増える傾向にありますが、よく知られるのは次に挙げる約50種類です(※1)。
●2つの必須脂肪酸
●8つの必須アミノ酸(子供は10、早産児は11)
●13種のビタミン類
●20~21種のミネラル類
●炭水化物などのエネルギー源
●水
●酸素
●光
これらの必須栄養は、あなたの健康を常に見守ってくれる「チーム」として力を発揮します。見守るだけでなく、ダメージがあれば修復もします。健康の実現にはこのように「必須栄養チーム」の仕組みがあり、もしチームの栄養が一つでも欠けていれば、残念ながら力を発揮できません。必須栄養は絶対に全部が必要なのです。
この中で、水や酸素がなければ生きていけないことは想像しやすいでしょう。一方で、見落としがちなのが「2つの必須脂肪酸」です。脂肪なんてないほうが健康そう? いえいえ、水や酸素と同じ必須栄養です。
例えば、私たちが健康でいるためには、からだを作る細胞が健康でなければなりません。しかし、この2つの必須脂肪酸がなければ健康な細胞は一つも作れないのです。
実際に、私たちの細胞を健康にしているのはATP(アデノシン三リン酸)という細胞内で作られるエネルギーです。このエネルギーを作る時に酸素が必要なのですが、酸素を細胞の中に取り込む「酸素取り込み係」を担当するのが細胞膜にある「オメガ3脂肪酸」「オメガ6脂肪酸」という2つの必須脂肪酸です。もしこれらがなければ、細胞は酸欠になりエネルギーを作れず、細胞を健康にすることができないわけです。2つの必須脂肪酸の大切さを少しは実感いただけたでしょうか?
また、これらの必須脂肪酸は代謝により分子構造を変えることで、からだのさまざまな場所で重役を担っています。その代表が脳です。オメガ3脂肪酸とオメガ6脂肪酸は、分子構造が変わると「DHA(ドコサヘキサエン酸)」「EPA(エイコサペンタエン酸)」になります。DHAやEPAは、脳神経がよく働けるように助ける役割を果たしており、認知機能や情報を伝達する力の維持に関わっているといわれています。魚の脂質に含まれることで知られていますが、私たちのからだの中ではこの2つの必須脂肪酸から作られています。