ハーブとは「生活に役立つ、香りのある植物」の総称。化学製品がなかった昔、ハーブはケガや病気を癒し、病害虫を避け、衣類を染めるなど、日常生活に欠かせない存在でした。身近な植物であることが前提で、からだに取り込んで害になるものはハーブとはいいません。
私たちが普段目にするハーブといえば、バジルやミントなど、スーパーの野菜売り場に並ぶ香草でしょう。これらは「クッキングハーブ」と呼ばれ、肉や魚の臭みを消したり、風味を付けたりするのに使われます。他にも薬効を期待して利用する「メディカルハーブ」、染め物に用いる「ダイイングハーブ」などがあります。藍染めで使う藍という植物はダイイングハーブである一方で薬草として利用されることもあり、一つのハーブがさまざまな用途を果たしています。
人間とハーブとの関わりはとても古く、古代エジプトではミイラを保存する防腐剤としてハーブが使われていました。中世ヨーロッパでも、大流行したペストの感染対策としてハーブをくちばし状のマスクの中に入れていたそう。
意外と知られていませんが、現在使われている医薬品の4分の3はハーブの成分が元になっています。例えば、解熱剤のアスピリンはバラ科のメドスイートから、抗がん剤のタキソールはイチイ科のタイヘイヨウイチイから。インフルエンザ治療薬として知られるタミフルも、中華料理でお馴染みの八角の成分から生まれたものです。このように、現代人の健康にもハーブは大きく貢献しています。
特に近年になって欧米を中心に関心が高まっているのが、最新の現代医療と、植物療法などの伝統医療を組み合わせた「統合医療」です。この植物療法に用いられるのが、薬効があるメディカルハーブ。伝統医療は現代医療のように切れ味が鋭い治療はできませんが、作用が穏やかで副作用の心配が少ないため、強い薬を処方しづらい高齢者や妊婦の不調、病気、ストレスからくる心身症に適しています。最新医療と伝統、両療法の得手不得手を補い合うことで、患者さんの状態や希望に合ったより細やかな医療が提供できるというわけです。